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東京の身近な近代史を建築で巡る旅~本郷界隈~

「お盆休み、一日ちょっとどこかへ散歩しに行きませんか?」

そう専務に誘われたのは、お盆休みの3日前。夏休みの子ども達と、遊ぶ予定をがっちり入れているかもしれない家族思いの僕に、事前のスケジュール確認もなく、いつもこの人は直前に誘ってきます。

たまたま予定がなかったからいいものの、「もっと前に言えよ!」と心の中でつぶやき、「いいですよ」と笑顔で答える僕。

「どこに行きます?」とあたりまえの質問を返すと、
「いや、特に決まっていないのでお任せで!どこにします?」と、あたりまえといった顔で返す専務。
「ホワッツ???」え、俺が決めんの?「え~~じゃあ古里(こり)とかかな~~」
「いいですね~~、この前言ってた高輪散歩とかでもいいですよ」
正直どっちでもいいし、というよりお盆に車に乗りたくない僕は、
「じゃあ高輪にしましょう」

という事で高輪散歩という認識で迎えた当日。

どういう経緯か、なんとなくiPhoneに入れてある写真を見返しているとパッと目に入ったのが、木村伊兵衛の本郷森川町の写真(1953年)。
※専務の持っていた写真集をiPhoneで撮ったものです。
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いつか撮りに行こうと思ってストックしていた写真。

早速専務に「やっぱり今日本郷三丁目にしません?」とメールすると、「いまから電車に乗るところですが、いいですよ」と快いお返事をいただき、急遽目的地を変更。

偶然は連鎖するもので、第二回世界旅写真展の入選者マ~ヤから「今から事務所遊びに行ってもいいですか~~」。
「今日は専務と本郷散歩に行くけど、よかったら来れば」
「いいですねぇ~~、そうしたら川口くんも誘っていきますぅ」

川口くんは第一回世界旅写真展の入選者。木村伊兵衛をきっかけに、期せずして写真家ふたりと町歩きをすることになりました。

ふたりとの待ち合わせまでは、本郷の歴史的建造物群、東京大学の本郷キャンパスを散歩することに。
本郷キャンパスには、ひとつの重要文化財と8つの登録有形文化財、3つの都選定歴史的建造物があります。それ以外にも、正門や懐徳館、三四郎池などな好奇心を満たしてくれる見どころがいっぱいです。ほとんどの建物は、同潤会の理事も務めた、建築家で元東京帝国大学総長の内田祥三の設計です。同潤会最初期の中之郷アパートの設計は、内田研究室で行われたそうなので、同潤会アパート生誕の地ですね。

まずは、赤門から。

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キャンパスツアーの参加者でしょうか。お揃いのTシャツを着た人たちが集まっていました。

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後日調べたところ、学生が案内してくれる、無料のキャンパスツアーもあるそうです。→https://campustour.pr.u-tokyo.ac.jp/index.html

1924年(大正13年)の工学部2号館の完成から1940年(昭和15年)の工学部6号館の完成までの16年間に建てられた、東京大学本郷キャンパスの、内田祥三ゴシック建築を巡る旅の始まりです。

とは言いながら、なんとなく三四郎池へ。何年か前に娘とザリガニ釣ったな~~、なんて他愛もない話をしながら自然の中の小路を歩きます。

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上から、医学部2号館(本館)、法文1号館(登録有形文化財)、法文2号館(登録有形文化財)、七徳堂(都選定歴史的建造物)。
スクラッチタイルや半円アーチ、尖頭アーチが目を引きます。

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安田講堂。安田善次郎の寄付により建設されました。総合図書館は、ロックフェラー財団の寄付によって建てられたそうです。

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法文2号館のアーケード。

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工学部1号館(登録有形文化財)のエントランスホールから大銀杏をみる。
さすが、建築学科のある建物ですね。昭和10年に内田祥三によって設計された建物を、平成8年に香山壽夫がリノベーションしたそうです。

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建物だけでなく、外灯やマンホールなども趣向を凝らしています。マンホールには、「東京帝国大学」の文字が。外灯はアールデコ風です。

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工学部1号館前の大銀杏を背景に、記念撮影。川口くんのポーズが、なぜかクラーク博士(笑)。それじゃ大学が違うよ!!

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お腹もすいてきたので、正門から東大を後にします。
東大の正門は赤門ではなくて、こちらです。築地本願寺を設計した伊東忠太のものです。かつては鉄扉だったようですが、現在はアルミ合金製のレプリカが取り付けられています。伊東忠太といえば!の幻獣を探してみましたが、こちらにはありませんでした。

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※キャンパス内の見学は少人数の場合は、事前登録が不要ですが、15人以上の場合事前登録と申込みが必要となります。詳細は東京大学のホームページをご覧ください。→http://www.u-tokyo.ac.jp/gen01/public02_05_j.html

お昼は、明治時代から東大生の胃袋を満たしてきたという「食堂もり川」へ。
鮪ブツ冷奴定食をいただきました。

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お腹も満たしたところで、今日の目的地、本郷森川町の三角地帯へ!

場所はすぐに見つかりましたが、建物や道の雰囲気は大分変っていたので、違った向きであ~でないこ~でない、この高さだと手を上げてノーファインダーだ、いやそれは無いだろ~~なんてやっていると、

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通りがかったおじさんが、「ここは木村伊兵衛って人の写真で有名な場所だよ」
「そうなんです。それを現代版で撮ってみようと思って。」
「それじゃあ、向きが違うよ。こっからあっちだよ。」

角のパン屋さんをリノベーションして、オープンスペース「もりばあのいえ」として運営している方も出てきてくれて、賑やかな井戸端会議に発展。

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正確な場所も分かったところで、いざ本番で撮ったのがこちら。

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オリジナルがこちら。
※専務の持っていた写真集をiPhoneで撮ったものです。
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実際に立ってみると、人との距離感など立体的な感覚も見えてきて、当時の町の雰囲気がより深く想像できました。こういう写真の楽しみ方もいいですね。

この辺りの歴史も教えてくれた、もりばあのいえです。地元の人でなくても自由に借りられるそうです。

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無事に主目的も果たし、本郷界隈の歴史的建築物を巡る旅を続けます。

下宿街の雰囲気を残す、鳳明館(登録有形文化財)。

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ドイツ壁の塀や洗い出し仕上げの石塀、壁からのぞく庭木や庭石に、一瞬で時間が遡ります。1泊7,500円位から泊まれるようですので、都会の登録有形文化財を楽しんでみてもいいですね。

続いては、樋口一葉が通ったという、菊坂の旧伊勢屋質店。ここも登録有形文化財です。

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一時期、売却されるというというニュースが流れ、本郷館に続き解体が危ぶまれましたが、学校法人の跡見学園が購入し、一般公開されています。

こちらは樋口一葉の旧居跡。一葉が使ったとされる井戸も現存しています。

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裏手の鐙坂には、誰もが国語辞書でお世話になった、金田一京助の旧居跡も。

秩父セメントの創設者の諸井邸の現存を確認し、

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折角なので、文京ふるさと歴史館に入ってみました。ここでは東京市営真砂町住宅の模型が飾られています。関東大震災の後の大正12年から14年にかけて建てられた市営住宅の一部で、マンサードの屋根は第二期のものとのこと。

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弓町のクスノキにあいさつし、

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最近、廃業・解体のニュースが流れた、手塚治虫もカンヅメにされたという朝陽館に立ち寄り、

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最後は、長時間の散歩を思い返しながら乾杯。

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「より道 ちか道 散歩道」の取材で歩いたのは、2010年12月。それから6年で大分建物がなくなっていました。活用保存していくことの難しさを感じつつ、長い間町並みを形成し、歴史を紡ぎ、そして消えていった建物に敬意を表し、当時の写真を並べました。

■本郷館(2011年解体)
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■民家(解体年不明)
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■福士邸(解体年不明)
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