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神戸の住宅遺産を巡る旅1日目 芦屋・岡本

住宅遺産トラストが、神戸市岡本にある洋館の新しい住み手を探しているというニュースがあった。大正12年に木子七郎設計、施工清水組で建てられたらしい。

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木子七郎は、明治17年生まれの建築家。大林組を経て29歳で独立し、代表作である愛媛県松山市にある重要文化財の洋館萬翠荘(旧久松定謨伯爵邸)は、ちょうど同じ時期の大正11年で39才の時のもの。東京には、靖国神社の北、九段中学校の向かいに建つスパニッシュの洋館、旧山口萬吉邸があります。

清水組は、スーパーゼネコンの清水建設の前身の会社。小林清親など多くの浮世絵師に描かれた第一国立銀行や、渋沢栄一邸(設計:辰野金吾)など、多くの財界著名人の邸宅も手がけました。

当時、清水組の手掛けた邸宅の図面をまとめて解説した本も内田青蔵監修で出版されています。

明治大正の邸宅

余談ですが、大正11年は、大阪の箕面で「住宅改造博覧会」が開催された年です。博覧会には、清水組や竹中工務店、大林組、鴻池組、錢高組といった現代のゼネコンの他に、輸入住宅の先駆け、橋口信助のあめりか屋なども出展したようです。この当時はゼネコンも住宅の割合が高かったのですね。

そんな時代の洋館の見学会が行われるというのでは、歴史的建築物を愛してやまない青山物産としては、見に行かない手はない!という事で、2日間の神戸の旅に行ってきました。

最近は函館に行くことが多くなりましたが、実は神戸にも少なからず縁があり、一時期は一年に何回か通っていた場所でもあります。六甲山から大阪湾に下る斜面には、北野や旧居留地といった洋館や近代建築を活用したレストランやカフェが多く、目でも舌でも楽しめる町です。

今回は、今までの元町や三ノ宮を中心とした旅ではなく、郊外(と言っても電車で20分ほどの距離ですが)にある町がメインになりますので、違った趣がありそうで楽しみです。

今までの旅はこんな感じです。↓↓↓↓↓
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飛行機は9時5分発ですので、二子玉川7時発のリムジンバスに乗れば間に合います。珍しく渋滞していましたが、7時40分には空港に着きました。

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何度来てもこれから始まる旅への期待感が膨らむ景色ですね。

飛行機は10分遅れの9時15分発で、10時30分に神戸空港に到着です。
空港からはポートライナーに乗ります。スーパーコンピューター「京」の京コンピューター駅を通り、18分で三ノ宮へ。

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岡本の内覧会までは少し時間があるので、神戸に来たら必ず立ち寄るいつものカレー屋さんでランチを。ここのトマトチキンカレーは絶品で、かれこれ10年来のお付き合い。開店時間に行ったら既に行列という人気ぶり。

人気が出るのは嬉しいけれど、あまり人気が出過ぎると困るという複雑な気持ちもあるので、店名はナイショ、モザイクかけた外観写真のみで。

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朝が早く、朝食を摂るタイミングが難しい1時間ほどの飛行機旅。胃袋には少しスペースがありそうだけど、特段お腹がすいているというわけではなく、そうかといって、いま食べないといつ食べられるかわからないし。

そういう時でもここのカレーは満たしてくれます。なんだか、小腹を満たすのにちょうどよいだけみたいな書き方になってしまいましたが、毎日食べても飽きのこない、本当においしいカレーです。

おばちゃんとの再会で、心もお腹も満たし、岡本の家の前に見ておきたい芦屋のヨドコウ迎賓館へ。

ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸)は大正13年にフランク・ロイド・ライトの設計で建てられた個人住宅で重要文化財です。

ライトの事務所で働いていた田上義也が設計した函館のプレイリーハウスの継承を手伝った縁から、どうしても見ておきたかった住宅です。人の繋がり、時代の繋がりを住宅で辿る。幸せです。

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神戸や芦屋は、六甲山から大阪湾への南傾斜地に東西に広がっているため、北に向かう時は常に坂道。山からの水が南の海へ向かって、縦に幾筋も流れています。山と海のつながりをこんなに身近に感じられるのも、この地域の魅力。

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ヨドコウ迎賓館については、また別の機会に書こうと思います。

大谷石や窓の装飾、窓に映る景色や室内を流れる独特の空気を2時間程堪能し、タクシーで一番の目的の「岡本の家」へ。阪急神戸線では1駅の距離ですので、電車でもよかったのですが、とても暑い日に坂の町をカメラを背負って歩くのでは、着くことが目的になってしまいそうでやめました。

ちなみにこの辺りは、北に山、南に海ですので、生活エリアは必然東西に細長く伸びていきます。そこに、阪急、JR、阪神の3路線が一定の間隔を保ちながら平行に走っているので、近場に駅がある何かしらの電車に乗れば、大よその目的にまではたどり着ける便利な場所です。

岡本の家は、南傾斜の斜面に細い路地が家々をつなぐ住宅街にありました。室内は写真撮影可能でしたが、個人所有で尚且つ一般公開していない住宅ですので、室内写真掲載は控えます。

外観はこんな感じ。ベンガラ色の鱗状の下見板と、白い鎧戸が目を引きます。

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六甲山を背にした斜面の住宅街。大きな石積みの擁壁に斜めに引かれた階段を上り、ヨーロッパのお城で見るような、槍のような鉤のある先の尖った鉄格子の門を抜けて敷地に入ります。

門から玄関までは、建物を左にくるっと回り込むようなアプローチ。

玄関ポーチは半切妻に名栗の柱。腰壁はドイツ壁?側面にベンチが取り付けられていました。
このベンチは雨が似合う。なんて独り言も。

玄関ホールに入ると、年を重ねた漆喰と木の色合いや、壁や天井の漆喰、階段や柱の木に施された、細かく瀟洒な装飾に圧倒されます。内覧会では赤いカーペットが敷かれていましたが、一部に黒檀が使用された、寄木のフローリングもお洒落でした。

しっかりした造りで震災にも持ちこたえたようですが、オーナーも高齢で暫く住んでいなかったせいか、なかなか手を入れることが難しく、漆喰壁が落ちていたりと所々に傷みが見られました。実用とするには、大掛かりな工事が必要そうです。

市の指定文化財に登録すれば、固定資産税の減免や補修工事の補助も受けられるようですが、現時点では登録されていないようです。

実際に購入するという事を考えると、まずは購入や改修にあたっての資金調達という大きなハードルが見えてきます。

建物や内装、庭などの手入れにも維持費がかかるとなると、住居としての活用より、利益の上がる運営方法に目が行きます。住居以外となると、用途地域や建築基準法といった法的なハードルも出てくるようですし。

生活様式や水準が大きく変わった現代では、昔の住宅に住むというのは、なかなか難しいことなのでしょうか。建物が変わると同時に町並みも変わり、町の文化も変わっていく時代で、変わらないものを繋いでいくことの難しさを感じるとともに、函館の相馬邸を、個人で購入し補修し一般公開し運営している東出さんの凄さを改めて感じました。

しかし、プレイリーハウスを繋ぐことができたということで、「いいものはいい!」という大きな自信を得たのは事実。

現所有者には、良好な状態で引継げるよう維持管理にあたっての資金的人的な提案、承継人には、必要な維持管理の内容や金額の明示化や職人の紹介など、見えない不安を少しでも和らげるような提案ができるようになればいいなぁと、おぼろげながら思った次第です。

今回岡本の洋館で出会った、住宅遺産トラストの原田さん、窪添さん、信森さんには、保存活動の実務的なお話もお聞かせいただいて、大変勉強になりました。
また、信森さんは翌日の塩屋巡りにもお付き合いいただき、おかげさまでとても有意義な時間を過ごすことができました。本当にありがとうございました。

塩屋巡りについては、また後日。

帰りは阪急岡本駅まで、日中の出来事を振り返りながらぶらぶら歩き、予約していた晩御飯まで時間があったので、三ノ宮のスーパー銭湯(大衆浴場のほうがしっくりくるレトロな温泉でした)で汗を流し、汗から出た塩分で白い模様が付いた紺のポロシャツを着替え、10年ほど前によく通った北野を少し散策しました。

オリーブが路肩に植えられた石畳の坂道。

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開店当初は会員制だったという、にしむら珈琲店。

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北野坂から神戸港方面を。

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洋館を改装した、スターバックス北野異人館店

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北野の有名な異人館、風見鶏の館

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バトラー、芝に水をやる

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食事のあとは、老舗のジャズバー「ソネ」で軽く一杯。

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よく歩き、よく学び、よく飲んだ一日でした。
信森さんと一緒に歩いた塩屋はまた後日。

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