熱海の三大別荘「起雲閣」からリゾートヴィンテージマンションへ

なぜ熱海なのかは記憶にありません。

葉山の旧足立別邸や加地邸、神戸の旧グッゲンハイム邸、函館の伝統建築を守るひとのなどの取材で、住宅遺産に触れ、また芦名ではリゾート地のヴィンテージマンションに触れたこともあるかもしれません。旧グッゲンハイム邸の取材で塩屋に訪れ、そこから真鶴に派生して行ったこともあるかもしれません。

確固たる理由は無いけれど、今までなんとなく触れてきたものが、自然と新しい興味となり、そこから新しい行動となっていくのも、楽しみのひとつ。

きっと今回も、そういう感じで、熱海行ってみようか的な発想であったと思います。

言い忘れましたが、このブログ、時系列が若干前後しますので、ご承知おきください。

というわけで熱海、行ってきました。

昭和なリゾート ザ・熱海

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熱海といえば、連想するのは、海、別荘、温泉でしょうか。昭和な感じでいうと新婚旅行先。ニュースだか本だかで聞いた人車鉄道のイメージもあったかな。

海岸沿いの駐車場に車を止めて、ぶらぶら歩いてみることにしました。

海のそばといえば、やっぱり渚。海岸沿いから国道135号線までの地域の渚町は、飲食店が軒を並べる繁華街。
スナックやカフェ。

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昭和21年創業の洋食屋、スコット。昭和21年というと創業70周年!!

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いろいろあって悩みましたが、今回のお昼は、ワンタンメンが美味しいと評判の「わんたんや」にしました。
日差しの強い日には、日傘を貸してくれます。普段は行列ができるそうですが、少し早めの到着だったせいか、並んでいるのは、僕らだけ。しばらくすると何組か並んでいました。

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熱海の目抜き通り、熱海銀座商店街。住所は熱海市銀座町。そのまんま。

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加藤茶も熱海には来たでしょうし、もしかしたら伝説のお色気芸もここが発祥かも。

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熱海の新しい波と伝統

商店街の中ほどには、おしゃれなゲストハウス「guest house MARUYA 」。シングルで3,600円(税別)から泊まれるそうです。熱海をもう一度盛り上げよう!と新しい活動も始まっているようです。お向かいのカフェもお洒落でした。

guest house MARUYAはこちら→http://guesthouse-maruya.jp/

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熱海銀座商店街の四つ角にある、大正7年創業の和菓子屋「ときわぎ」。建物は昭和23年のもの。お向かいにも常盤木羊羹店というお店がありますが、それぞれのHPによると、元をたどると親族だったようです。今は全くの別経営だとか。

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そのまま市役所の方に向かい、糸川を渡り、かつての色街「中央町」へ。

簡素な2階建ての建物が両脇に連なる細い道は、中ほどで折れ、町の中が見通せません。

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レトロでいかにも妖しげな建物がそこかしこに。パラペットには様々なレリーフも。

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糸川に掛かる橋。欄干は、龍のような虎のような空想上の動物。川のほとりには桜が植えられ、電線は地中に埋められ、空がすっきりしていて心地よいです。

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熱海三大別荘のひとつ起雲閣

さて、本日のメインスポット。熱海市の指定有形文化財「起雲閣」です。第一次世界大戦の時に造船で財を成した実業家・政治家の内田信也が、実母のために大正8年(1919年)に1年かけて完成させた別荘です。住友別邸(現存せず)、岩崎別邸(熱海陽和洞:一般非公開)と並んで、熱海三大別荘のひとつに数えられていたとか。
当時は、和館の「麒麟・大鳳・孔雀」と表門(薬医門)と庭で構成されていました。

■表門(薬医門)

起雲閣

起雲閣
■和館「麒麟」

起雲閣
加賀藩の武家屋敷で使われていたという、群青壁。

金沢の加賀百万石の13代藩主前田齊泰が建てた成巽閣がルーツで、金沢では辻家庭園などでも見られます。ラピスラズリ(瑠璃)という顔料で、成巽閣ではヨーロッパから輸入されたものが使われ、当時は相当な高級品だったそうです。

推測ですが、蒐集家として有名なフランス人のエミール・ギメのお父さんが発明した、ギメ・ブルーではないかと思います。エミール・ギメのコレクションは、丸の内のKITTEにあるインターメディアテクに展示してあり、ギメ・ブルーもそこで見ましたが、同じように妖艶な色だったと記憶しています。

ギメの父は、ギメ・ブルーの開発で相当な財を成したようです。発光ダイオードもそうですが、青には計り知れない深みと夢があるようですね。

起雲閣では、旅館を開業した桜井兵五郎の時に塗り替えられたそうです。桜井兵五郎は石川県の出身ですから、特別な部屋に採り入れたのですね。

起雲閣
■和館の2階「大鳳」

起雲閣
■洋館「玉姫」のサンルーム。

起雲閣
■洋館「金剛」。名栗の柱にイングルヌック付き。

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■金剛の天井(左)、玉姫の天井(右)

起雲閣
■ローマ風浴室

起雲閣
■旧大浴場

起雲閣

■武田泰淳の間

起雲閣

■尾崎紅葉の間

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■離れ「孔雀」の棟。

起雲閣

■庭から和館と洋館を眺める。

起雲閣
■庭から見た展示室棟。

起雲閣
熱海市役所のHPで紹介されている、起雲閣の所有者と使われ方の変遷をまとめてみました。

1919(大正8)年-1925(大正14)年
所有者:内田信也(37歳‐44歳) 実母の別荘として建設
和館の「麒麟・大鳳・孔雀」と表門(薬医門)

1925(大正14)年-1944(昭和19)年
所有者:初代根津嘉一郎(65歳‐1940年に亡くなるまで)、2代目根津嘉一郎(‐31歳)
初代が、洋館の「金剛・ローマ風浴室・玉姫・玉渓」を新築 別荘として利用

1947(昭和22)年-1999(平成11)年
所有者:桜井兵五郎(67歳-1951年に亡くなるまで)
旅館「起雲閣」として開業。展示室「初霜・春風・有明」を新築

2000年-
所有者:熱海市
一般公開

参照:熱海市役所HP(http://www.city.atami.shizuoka.jp/page.php?p_id=900)
年齢は生年月日より計算しましたので、誕生月で誤差があるかもしれません。

1000坪の池泉回遊式庭園と、3棟の和館、2棟の洋館に、心と頭を刺激され、心も癒されたので、車で少し熱海を見て回ることにしました。

せっかくなので、リゾートヴィンテージマンション観察も

ヴィンテージマンション好きの不動産屋としては、やはりヴィンテージマンションを見ておかなければ。という事で、まずは、伊豆山(いずさん)コーポラス。

昭和39年築のニチモプレハブ系コーポラスです。ここからは分かりませんが、バルコニーからは相模湾を望む絶景が広がっているようです。

熱海アビタシオン
日本初のリゾートマンション「熱海アビタシオン」。1号棟昭和35年4月~5号棟昭和48年1月。
熱海アビタシオンは、東京でも目黒柿の木坂アビタシオンや、洗足池畔アビタシオンといった今も流通しているヴィンテージマンションを手掛けた、アビタシオン株式会社の分譲。アビタシオン株式会社のホームページによると、熱海アビタシオン1号棟が、アビタシオンシリーズの1棟目だとか。

写真は、昭和37年8月築の2号棟。(アビタシオンシリーズの4棟目)

熱海アビタシオン
2号棟のロビー。

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他にも熱海プラザ(昭和51年築)や熱海スカイハイツ(昭和51年築)等、写真は撮れませんでしたが、分譲マンション黎明期のデベロッパーが建てた、温泉付きリゾートヴィンテージマンションがいくつも並んでいます。

伊豆山神社にもお参りしてきました。

伊豆山漁港のあたりの伊豆山浜から続く参道は、ほとんどが階段で、平成22年2月14日に行われた段数調査によると、本殿前まで2551段あるとか。僕らは、途中の宿の平というところにある駐車場に停めて行ったので、すべて登ってはいませんが、それでも1494段でした。

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境内からの景色。今年の8月に閉館した、お風呂が19カ所あったという水葉亭も見えます。

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星野リゾート界 別館 ヴィラ・デル・ソルや、重要文化財に指定された、ブルーノタウト設計の旧日向別邸など、熱海には海を見渡す絶景を持ついい建物が多いですね。

今回は、すべて回ることは出来ませんでしたが、次回はゲストハウスにでも泊まって回ってみようかな。

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四方田裕弘
  • 四方田裕弘
  • 1976年生まれ、東京生まれ東京育ちで2人の娘の父です。建物、特に近代建築が好きで、ちょっとした旅行でも近代建築を探し当て、見に行ってしまいます。

    【保有資格】CPM(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/管理業務主任者/相続アドバイザー